時間栄養学にみる朝食抜きは?

 こんにちは、ヘルスフードアドバイザーの井町清水です。

朝食を抜くデメリットは健康リスク

糖は脳の唯一のエネルギーのため、

朝食を食べないと糖が不足し脳も働きが鈍くなります。

ブドウ糖の不足は、ストレスの原因にもなります。

脳の唯一のエネルギー源のブドウ糖が欠乏すると

集中力が続かずイライラしやすくなります。

さらに低血糖状態になった体は、睡眠障害を起こしやすくなります。

近年朝食抜きが支持される意見も増えていますが、

まだまだデメリットのほうが大きいとされています。

ここでは朝食抜きのデメリットを時間栄養学をもとに解説します。

集中力や記憶力の低下

朝食を抜くことで、脳のエネルギー源となるブドウ糖が不足するため、

集中力や記憶力の低下につながります。

ブドウ糖は脂溶性のビタミンAやビタミンDと違って、

体内に貯蓄しておくことができません。

したがって朝食を抜くことで脳にエネルギーが供給されないため、

イライラや勉強、仕事がはかどらないといった弊害を招きやすくなります。

血糖値の急変動が起きやすくなる

朝食抜きの生活を行うと血糖値が下がり始めるため、

体内では血糖値を上げる働きをする

インスリン拮抗ホルモンの分泌量が増えます。

このように私たち人間の体は血糖値が下がり始めたら、

自然に血糖値が高まるようになっていますが、

朝食抜きの弊害はここにあります。

朝食を抜いた場合、昼食を食べる頃には

インスリン拮抗ホルモンによって

血糖値が上昇しやすくなっています。

つまりこのタイミングで昼食を食べてしまうと、

血糖値が通常よりも高くなるということです。

昼食によって急上昇した血糖値を下げるために、

インスリンが大量に分泌され、血糖値を下げようとします。

しかし、今度は大量のインスリンによって血糖値が急激に下がり、

その結果としてまた大量のインスリン拮抗ホルモンが

分泌されるという悪循環に陥りやすくなってしまいます。

このような血糖値の急上昇、

急降下は体への負担も非常に大きく、何より肥満になりやすいです。

【参考】食事のとり方で血糖値はこんなに変動します!|日本医師会

自律神経が乱れやすくなる

朝食を抜くことで自律神経の乱れを引き起こすこともあります。

自律神経は心臓や血管の循環器、胃や腸といった消化器、

肺や気管支の呼吸器などを正常に機能させるために、

24時間働き続けている神経です。

自律神経には活動時や昼間に活性化する交感神経、

夜のリラックス時などに優位になる副交感神経があります。

自律神経の乱れとはこの2つのバランスが崩れたときに起きるものであり、

体にさまざまな不調をもたらすことがわかっています。

自律神経が乱れる原因は夜ふかしや暴飲暴食といった不規則な生活、

ストレスなどさまざまなものがありますが、

そのうちのひとつに朝食抜きが挙げられます。

朝食を抜くことで、体内時計が正常に働かなくなり、

その結果として自律神経の乱れも引き起こすことになります。

自律神経は体温調節などの役割も担っているため、

朝食抜きの生活は冷え性にもつながる可能性があるでしょう。

筋肉量の減少

朝食抜きによって脳にブドウ糖を送ることができないようになると、

まず肝臓で蓄えられたグリコーゲンが使われるようになります。

そしてこのグリコーゲンが枯渇(欠乏)すると、

次に筋肉のエネルギーが使われていきます。

つまり朝食抜きは一歩間違うと筋肉量の減少につながり、

さまざまな弊害を引き起こすということです。

筋肉量の減少に伴うデメリットとしては基礎代謝の低下、

運動能力の低下などが挙げられます。

筋肉はじっとしていても消費される基礎代謝の約2割を占めています。

【参考】e-ヘルスネット 情報提供「加齢とエネルギー代謝」

したがって筋肉量が減ることで、

1日の消費カロリーも自ずと

減少傾向に陥る可能性があります。

1日の消費カロリーが少なくなれば、

当然肥満のリスクも上昇するため、

ダイエットがスムーズに進展しないと

いった悩みも抱えやすくなるでしょう。

病気のリスク上昇

国立がん研究センターと大阪大が行った研究では

朝食を抜く人ほど脳卒中を発症する

リスクが高まることがわかっています。

この研究は全国8県の45歳~74歳の男女約8万人を

1週間の朝食をとる回数で4グループにわけ、

約12年~15年かけて脳卒中(脳出血、脳梗塞など)や

虚血性心疾患との関連を追跡するというもの。

そして調査の結果「朝食を摂取しない」

「週1回~2回しか食べない」グループは

「毎日食べる」グループよりも、脳卒中全体の発症が1.18倍高く、

このうち脳出血は1.36倍も発症確率が上昇することが判明した。

ちなみにこの研究では脳梗塞、くも膜下出血、

虚血性心疾患との関連性は見られなかったとのことです

朝食を抜くことで、脳出血の発症確率が高まる理由についてですが、

高血圧が関係していると考えられています。

脳出血の原因のひとつに高血圧があります。

血圧は朝食抜きによる空腹などのストレスにより、

さらに上昇するという研究結果もあるため、

脳出血の発症率が高まるという見方もあります。

ちなみに朝食抜きは脳卒中の発症リスクを高めるだけではなく、

肥満や糖尿病のリスクを上昇させるという専門家もいます。

【参考】
朝食抜きで脳卒中リスク上昇、

国立がん研究センターと大阪大学など調査

| 大学ジャーナルオンライン

朝食抜きの生活を送る上での注意点

朝食抜きはメリットもありますが、

場合によってはデメリットによる弊害のほうが大きいため、

できるだけ朝食を摂取することを推奨します。

ただし仕事などが忙しく、朝食を準備する時間がないという方も多くいます。

そのような方のために、ここでは朝食抜きの生活を送る上での注意点を解説します。

起床後は水分補給やフルーツなどでの栄養補給を意識する

タンパク質、脂質、炭水化物と栄養バランスの

整った朝食を用意できない方は、

水分補給や手軽に食すことができる食物などで

栄養補給を行うようにしましょう。

起床後の体は就寝中にかいた汗の影響で、

水分を欲しがっています。

この状態を放置しておくと、脱水症状になる可能性もあるため、

起床後はコップ1杯の水を飲むことを推奨します。

また起床後の水分補給は体内の毒素排出にも役立ちます。

勉強や仕事のパフォーマンスを高めるためには、

水分以外の栄養素も摂取しておきたいところですね。

朝食抜きの生活を送る場合におすすめしたいのはバナナです。

バナナは脳のエネルギー源でもあるブドウ糖や糖が

脳のエネルギーになるのを手助けする

ビタミンやミネラルなども含まれているので、

効率的に脳へのエネルギー補給を行うことができます。

100gあたり約90kcalと、低カロリーな点も魅力的です。

その他、リンゴやキウイといったフルーツもおすすめです。

成長期の子どもは朝食抜きはNG

成長期の子どもを持つご両親は自分が朝食を食べなくても、

子どもだけには食べさせるようにしましょう。

朝食を食べることで学校での勉強や運動においても

高いパフォーマンスを発揮することができます。

子どもは大人と違って、これから脳や体が

どんどん成長していく時期です。

したがって3食栄養バランスの整った

食生活が非常に重要となります。

ご飯やパンなどの炭水化物、卵や肉、魚のタンパク質、

果物や野菜などに含まれるビタミン、食物繊維といったように

摂取する栄養素に偏りが見られないように工夫してみましょう。

ちなみに文部科学省が公表している資料では、

朝食をしっかり食べる子どもほど、

ペーパーテストの得点が高い傾向にあるとのことです。

【参考】文部科学省「第1章 子どもの生活と現状」

よほどの事情がない限りは朝食をしっかり食べよう!

今回は朝食抜きのメリット、デメリットなどを解説してきました。

近年は朝食抜きダイエットや置き換えダイエットなどの影響で、

以前よりも朝食を抜く食生活が推奨されつつあります。

しかし、体や心の健康を考えると、

やはり朝食はしっかり摂取すべきという声が圧倒的に多いのも事実です。

したがって朝食に関しては、よほどの事情がない限りは摂取することをおすすめします。

「朝食を作る時間がない」「朝はどうしても食べられない」

という方もコップ1杯の水分補給やブドウ糖などを

手軽に摂取できる食べ物を活用するといった工夫を施してみましょう。

今日も最後までお読み下さりありがとございます。

健やかな一日でありますように❣

※時間栄養学とは

2017 年のノーベル生理学・医学賞で話題の「体内時計」は、

睡眠障害や肥満など、私たちの健康に大きく関わっていると言われています。

この体内時計の調整に、重要な役割を果たしているのが食事です。

「時間栄養学」の第一人者、理工学術院の柴田重信教授は

時間栄養学に沿った適切な朝食・夕食を摂れば、

昼食(13:00ごろまで)は好きなものを食べても良いとか…。

その理由を体内時計のメカニズムから解き明かしている。